稲垣吾郎が素朴な父親役で見せる、アラフォー男のリアル

『半世紀』稲垣吾郎、長谷川博己、渋川清彦
『半世紀』稲垣吾郎、長谷川博己、渋川清彦
第31回東京国際映画祭で観客賞を受賞した、稲垣吾郎の主演映画『半世界』が2月15日(金)より公開。本作は、『エルネスト もう一人のゲバラ』(2017年公開)の阪本順治監督のオリジナル脚本による映画化作品で、稲垣は田舎で備長炭の炭焼きに勤しむアラフォー男役を好演している。

稲垣が演じる高村紘は、妻・初乃(池脇千鶴)と、反抗期の息子・明(杉田雷麟)と田舎で暮らす、どこにでもいそうな普通の父親だ。本作での稲垣は、まぶしいイケメンオーラを封印し、ヒゲを生やして、素朴な炭焼き職人になりきり。特に、森のなかで佇む稲垣からにじみ出ている中年男のリアルな哀愁がすばらしい。

紘と、中学からの旧友で、海外派遣されていた自衛隊員の沖山瑛介(長谷川博己)、同じく同級生で、中古車販売業を営む岩井光彦(渋川清彦)とが織りなす男の友情もいい。それぞれタイプの違う3人だが、再会すれば一気に学生時代の関係性に戻る。特に、極寒のなか、毛布にくるまって、海を見ながらお酒を飲むシーンが、じんわりと胸に染み入る。

阪本監督は稲垣に今回の役をオファーした理由について「土の匂いのする役をやったらどうかと。炭焼と稲垣くん、一見ミスマッチングのようでおもしろいなあと」と述べているが、大いに納得。正直、こういう何気ない演技にこそ、役者本来の人間力が出る。改めて稲垣吾郎という俳優のポテンシャルの高さにうなってしまう。

その友情のドラマは後半で意外な展開を迎えるが、そこにまつわる夫婦愛、親子愛だけではなく、戦地から戻った自衛隊員の葛藤なども織り交ぜている点が阪本監督らしい。観終わったあと、『半世界』というタイトルを反芻し、いろんな余韻を味わえる奥行きのあるドラマ。ゴローちゃんのリアリティのある演技に触れてみて。

『半世界』
脚本・監督:阪本順治
出演:稲垣吾郎、長谷川博己、池脇千鶴、渋川清彦、小野武彦、石橋蓮司ほか
2019年2月15日(金)より全国ロードショー
http://hansekai.jp/
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